# 著作物−二次的著作物

 

 このような漫画は、その作成過程の実態にもよりますが、「原作」とされているAが原作者で「画」とされているBが二次的著作物の作者である可能性が高いと思われます。

そして、その場合には、漫画の使用に当たっては、AとB両方の許諾を得る必要があります。

 

〜〜〜 補足説明 〜〜〜

 

二次的著作物とは、著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物を言います(著作権法2条1項11号)。

 

二次的著作物となるための要件は、以下のとおりです。

 

「翻訳・・・することにより創作」とは、言語の著作物について、言語体系の違う他国語で表現しなおすことを言います。

例えば、外国語の小説を日本語の小説にすることがこれにあたります。

これに対し、盲人用の点字訳、暗号文の解読、速記文字の反訳等は、二次的著作物とはならず、単なる複製物になります。言語体系が異なるわけではなく「創作した」とは言えないからです。

 

「編曲・・・することにより創作」とは、音楽の著作物について、楽曲をアレンジして原曲に付加的価値を生み出すことを言います。

例えば、クラシックの楽曲をジャズにしたりすることがこれにあたります。

これに対し、イ調をハ調に転調したり、即興音楽の楽譜化等は、新たな創作ではないので、二次的著作物とはならず、単なる複製物になります。

 

「変形」とは、美術の著作物について、次元を異にして表現することや表現形式を変更することを言います。

例えば、漫画のキャラクターをフィギアにしたり、彫刻を絵画にする場合が次元を異にすることであり、写真を絵画にすることが表現形式を変更することにあたります。

 

「脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作」とは、原著作物の内面形式を維持しながら、具体的な表現である外面形式を変えることを言います。

例えば、小説をシナリオにすれば「脚色」、映画にすれば「映画化」になります。

「その他翻案」の例としては、古語の現代語化、文語の口語化、小説を漫画にすること、プログラムのバージョンアップなどが挙げられるでしょう。

 

二次的著作物となるか単なる複製かの区別は、新たな「創作」が介在したか否かにあると言えるでしょう。

これ関連した裁判例には、以下のものがあります。

@キャンディ・キャンディ事件(最高裁平成131025日判決)

「本件連載漫画は、被上告人(原作者)が各回ごとの具体的なストーリーを創作し、これを400字詰め原稿用紙30枚から50枚程度の小説形式の原稿にし、上告人(マンガ家)において、漫画化に当たって使用できないと思われる部分を除き、おおむねその原稿に依拠して漫画を作成するという手順を繰り返すことにより制作されたというのである。この事実関係によれば、本件連載漫画は被上告人作成の原稿を原著作物とする二次的著作物であるということができる」

 

二次的著作物は、以下のように扱われます。

 

@二次的著作物の利用者 対 原著作者

二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有します(28条)。

したがって、二次的著作物を利用する場合には、原著作物の著作者の承諾が必要になります。

例えば、Aの原作小説がBによって映画化された場合には、その映画を利用する者は、甲の許諾も必要になります。

 

A二次的著作物の著作者 対 原著作者

二次的著作物に対するこの法律による保護は、その原著作物の著作者の権利に影響を及ぼしません(11条)。

したがって、原著作者の許諾を得ずに二次的著作物を製作すれば、翻案権の侵害になります。

例えば、上記の例で、BがAに無断で映画を製作していれば、Bの行為はAの翻案権を侵害することになります。

 

また上記@の結果とも相まって、二次的著作物は、原著作者と二次的著作物の作者との合意によらなければ利用できないことになります。

これ関連した裁判例には、以下のものがあります。

@キャンディ・キャンディ事件(最高裁平成131025日判決)

「被上告人(原作者)は、本件連載漫画について原著作者の権利を有するものというべきである。そして、二次的著作物である本件連載漫画の利用に関し、原著作物の著作者である被上告人は本件連載漫画の著作者である上告人(マンガ家)が有するものと同一の種類の権利を専有し、上告人の権利と被上告人の権利とが併存することになるのであるから、上告人の権利は上告人と被上告人の合意によらなければ行使することができないと解される。したがって、被上告人は、上告人が本件連載漫画の主人公キャンディを描いた本件原画を合意によることなく作成し、複製し、又は配布することの差止めを求めることができるというべきである。」

 

B二次的著作物の著作者 対 その利用者

二次的著作物は、著作物として、原著作物とは別個独立に保護の対象になります(2条1項11号)。

この二次的著作物の保護は、許諾を得た翻案等であるか否かを問いません。

したがって、二次的著作物を利用する者は、まず、二次的著作物の著作者の許諾を得る必要があります。

例えば、上記の例では、その映画を利用する者は、まずはBの許諾が必要になります。

以 上

CopyrightC)弁護士 安藤信彦(2006