# 著作物−総論−思想性

 

 シェア占有上位5社をアイウエオ準備並べてその製品と価格を記載しただけの一覧表は、著作物とは言えない可能性が強いと思われ、著作権侵害になる可能性は低いと思われます。

仮に、素材の選択又は配列に創作性が認められる場合には編集著作物として保護される可能性がありますが、本件の場合はそのような問題もないようです。

もっとも、著作物にあたるか否かは必ずしも容易な判断ではありませんので、少なくともデッドコピーは避けることが賢明と思われます。

 

〜〜〜 補足説明 〜〜〜

 

著作物とは、「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術または音楽の範囲に属するもの」を言います(著作権法2条1項1号)。

著作権法10条1項は9個の著作物を列挙していますが(言語、音楽、舞踊、美術、建築、図形、映画、写真、プログラム)、これらは著作物の例示列挙です。

したがって、そこに列挙されていなくとも、著作権法2条1項1号に定められている各要件(@思想性、A創作性、B表現化、C芸術性)を充足すれば、著作物として保護されます。

また一方、一見10条1項の著作物に当たるかに見えても、2条1項1号の各要件を充足しないものは、著作物として保護されません。

本件で問題となるのは、「思想または感情を」表現した(@)と言えるかです。

 

著作物といえるためには、それが「思想または感情を」表現していることが必要です。もっともこれは、必ずしも哲学や心理学的な概念ではなく、「考え・感情」と言った程度に広く捉えられます。

 

言語の著作物に関しては、単に事実(社会的事実、歴史的事実、自然現象に関する事実等)のみを表したものは、著作物になりません。例えばクラスメートの氏名を単に50音順に並べたクラス名簿は単なる事実の羅列にすぎず(cf編集著作物、12条)、ある商品の価格表は単なるデータにすぎないので(cfデータベースの著作物、12条の2)、著作物に当たりません。

新しい数学の理論を発見した論文については、その論文の表現は著作物たりえますが、その理論それ自体は、著作物ではありません。

事実の伝達にすぎない雑報および時事の報道は、言語の著作物に該当しないとされています(10条2項)。例えば、単なる日々の社会事象そのままの報道や、人事異動、死亡記事等、事実だけを羅列した記事のように、誰が書いても同じになる事実を忠実に伝達するような記事がこれに当たります。

この要件に関連した裁判例には、以下のものがあります。

@ SMAPインタビュー記事事件(東京地裁平成101029日判決)

「『創作的』とは、表現の内容について独創性や新規性があることを必要とするものではなく、思想又は感情を表現する具体的形式に作成者の個性が表れていれば足りる。したがって、客観的な事実を素材とする表現であっても、取り上げる素材の選択、配列や、具体的な用語の選択、言い回しその他の文章表現に創作性が認められ、作成者の評価、批判等の思想、感情が表現されていれば著作物に該当するということがで」きる。

@ ラストメッセージIN最終号事件(東京地裁平成71218日判決)

「本件記事は、いずれも、休刊又は廃刊となった雑誌の最終号において、休廃刊に際し出版元等の会社やその編集部、編集長等から読者宛に書かれたいわば挨拶文であるから、このような性格からすれば、少なくとも当該雑誌は今号限りで休刊又は廃刊となる旨の告知、読者等に対する感謝の念あるいはお詫びの表明、休刊又は廃刊となるのは残念である旨の感情の表明が本件記事の内容となることは常識上当然であり、また、当該雑誌のこれまでの編集方針の骨子、休廃刊後の再発行や新雑誌発行等の予定の説明をすること、同社の関連雑誌を引き続き愛読してほしい旨要望することも営業上当然のことであるから、これら五つの内容をありふれた表現で記述しているにすぎないものは、創作性を欠くものとして著作物であると認めることはできない。」

@ 交通標語(ボク安心 ママの膝より チャイルドシート)事件(東京地裁平成13530日判決)

「文章表現による作品において、ごく短かく、又は表現に制約があって、他の表現がおよそ想定できない場合や、表現が平凡で、ありふれたものである場合には、筆者の個性が現れていないものとして、創作的に表現したものということはできない。・・・原告は、親が助手席で、幼児を抱いたり、膝の上に乗せたりして走行している光景を数多く見かけた経験から、幼児を重大な事故から守るには、母親が膝の上に乗せたり抱いたりするよりも、チャイルドシートを着用させた方が安全であるという考えを多くの人に理解してもらい、チャイルドシートの着用習慣を普及させたいと願って、『ボク安心 ママの膝(ひざ)より チャイルドシート』という標語を作成したことが認められる。そして、原告スローガンは、3句構成からなる5・7・5調(正確な字数は6字、7字、8字)調を用いて、リズミカルに表現されていること、『ボク安心』という語が冒頭に配置され、幼児の視点から見て安心できるとの印象、雰囲気が表現されていること、「ボク」や「ママ」という語が、対句的に用いられ、家庭的なほのぼのとした車内の情景が効果的かつ的確に描かれているといえることなどの点に照らすならば、筆者の個性が十分に発揮されたものということができる。」

 

美術の著作物に関しては、美術工芸品を含みます(2条2項)。

この要件に関連した裁判例には、以下のものがあります。

@ 博多人形事件(長崎地裁佐世保支部昭和4827日決定)

「本件人形『赤とんぼ』は同一題名の童謡から受けるイメージを造形物として表現したものであつて、・・・その姿体、表情、着衣の絵柄、色彩から観察してこれに感情の創作的表現を認めることができ、美術工芸的価値としての美術性も備わつている」「美術的作品が、量産されて産業上利用されることを目的として製作され、現に量産されたということのみを理由としてその著作物性を否定すべきいわれはない。さらに、本件人形が一方で意匠法の保護の対象として意匠登録が可能であるからといつても、もともと意匠と美術的著作物の限界は微妙な問題であつて、両者の重量的存在を認め得ると解すべきであるから、意匠登録の可能性をもつて著作権法の保護の対象から除外すべき理由とすることもできない。」

以 上

CopyrightC)弁護士 安藤信彦(2006